開発商品

 

   
 

深度スライスの有効性

 

使用機器:Conquest

   
 

コンクリート構造物に地中レーダを使用する目的は切ったり、穴を開けたりする前に、内部の構造を把握することにあります。事前に内部構造を把握することで、構造物の損傷を防ぎ、安全性が向上します。そして、 いかにしてコスト効率よく正確な内部情報を得るかが重要になります。
Conquestにはこの内部構造を知るための二通りの方法があります。ラインスキャンとグリッドスキャンです。

シングルラインスキャンは基本的にコンクリート内部の断面図が得られます(ラインスキャン)。内部構造が単純な場合にはこの方法は有効です。
複雑なコンクリート構造物は内部構造を把握するのが非常に難しいことが多く、グリッドを設定してデータを収集し、3Dで把握することが必要になってきます。(グリッドスキャン)

コストは現場に費やす時間が大きく関わってきます。ラインスキャンはあまり時間がかからないため費用も安くてすみます。グリッドスキャンはそれよりも少し時間はかかりますが、より総合的な把握が可能です。
コスト的には安くすんでも、対象物の構造を間違って把握することは危険です。そのせいで構造物を破損させて修理費用が発生したり、ケガにつながったり、信用を落としたりすることになりかねません。

先日オンタリオのリッチモンドヒルでConquestの講習会を行いました。工業用倉庫内のコンクリート部分をスキャンしました。ここではラインスキャンとグリッドスキャンを行いました。
図1のシングルラインスキャンでは、右側にPCD(パワーケーブルディテクター)反応とともに異常な鉄筋の状態が示されています。
PCD反応はそこに電流が流れている電線が埋設されていることを示唆しています。
シングルラインスキャンでは問題の可能性のある範囲はわかりますが、そこを切ったり穴を開けたりする場合に損傷させるリスクを回避するにはどうしたらよいかまでは解決できません。


図1 ラインスキャン 異常反応(赤丸)とPCD反応

グリッドスキャンを行って、いくつかの深度で図2と図3にあるような深度スライスを作成します。
スライス画像を見ると、通常の鉄筋構造の中にはっきりと斜めに走る何かがあることがわかります。これは電線管であると推測できます(電線管は通常、鉄筋構造の中での異常な反応として現れます)。

図3には1〜4の4本の電線管が見えます。1の電線管は他の3本よりも浅い場所にあります。1,2,3の管は鉄筋に対して45度の角度で走って、右上部でそれぞれが平行になるように曲がっています。4の管は右側の上から下へ走っていますが、鉄筋とは平行していません。

図4はPCD反応のスライス画像です。強い反応を示している部分は2と3の管と関連しており、電線がそこにあることがわかります。

 

このことから、シングルラインスキャンと比べ、詳細な情報が豊富に得られるグリッドスキャンは、より総合的なアプローチができます。かかる時間の差も10分程度です。リスクを回避するためなら、この程度の時間は全く問題にならないでしょう。

多くのユーザーとの対話からもわかったことですが、お客様に高価値のものをお届けするためには、わずか数分余計に時間をかけてグリッドスキャンを行い、深度スライスを作成することは大いに価値のあることです。
25年以上コンクリート内部探査を行ってきましたが、リスク回避のためにも、グリッドスキャンを行うことを強くおすすめします。そしてラインスキャンは最適なグリッドスキャンを行うための予備調査として使われるとよいでしょう。

   

 

 

 

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